2017/06/08 11:59


革の鞣しについて語り始めるととても一般の人が読み切れるような長さの文章にはならない。


一つ言えることはいち個人が一般消費者向けの製品として「革」に仕上げることは果てしなく困難だということだ。


現在、EZO LEATHER WORKSではパートナーシップを結んでいる東京・墨田区の山口産業株式会社に鞣しを依頼している。

しかし、それと並行するように本拠地・池田町でも独自に革をなめすことをあきらめたわけではない。


北海道池田町は十勝ワインの生産地である。そのワインを作る過程で排出されるブドウの果皮をエゾシカの生皮と一緒に漬け込みタンニンを抽出する。いわゆるタンニン鞣しである。そこに同じく池田町のミズナラ・カシワの樹皮を細かく刻んで一緒に漬け込む。漬け込む樽は十勝ワインを熟成させていたワイン樽で、この素材もフレンチオークといってむこうのナラ材を使用しているというなんともできすぎた話。


この鞣し方法はイギリスの田舎町にある小規模タンナーがされている伝統的な方法をヒントにしていて、一説によると2000年前から変わらない製法だとか。そして、この「オークバークタンニング」と呼ばれる鞣し法の長所もそこにあり、「はるか昔から変わらない製法」=「専門的な機械や特殊な化学薬品をつかわないでできる」ということだ。実は、通常、工業的に鞣されているタンナーさんのように革を本格的に鞣そうと思うと設備などの初期投資がウン千万円~という額になってしまう。これに対して、現在実験的に行っている池田町式オークバークタンニングは、

 

・漬け込んでいる樽→町のワイン事業で使い古されたものを払い下げ

・ブドウの搾りカス→いただきもの

・ミズナラ、カシワの樹皮→町内で伐採されたものを皮だけ剥ぎ取らせてもらっている。

 

このように経費をほとんどかけずにスタートをきれた。

資料などを読み込んでいくとタンニン槽に漬け込んでおく期間はなんと1年!大量生産には向かないものの、じっくりと革の繊維にしみ込んだタンニンの風合いは使い込むほどに味わいを深めていくようだ。

固くてもいい、厚みも均一じゃなくていい、自然な風合い、革の表情がそのまま残っている素材として工業的に鞣された革と一線を画すような仕上がりを目指して毎日かき混ぜている。