2017/11/09 17:32

野生獣皮の品質というものは個体差、季節、捕獲者などにとても大きく左右されるものなんです。

北海道の山は晩秋から徐々に食べるものが少なくなり、エゾシカは厳冬期には樹皮を剥いで食べたり、雪の下に埋もれてるクマザサを掘り起こして食べたりと非常に厳しい環境で生き抜いています。秋までに蓄えた脂肪は皮下脂肪、内臓脂肪、骨髄の中の脂肪まで使い尽くして冬を越します。それ故、その栄養状態に革も左右され、栄養状態の悪い時にはカサカサして薄っぺらい革にしか仕上がりません。

また、エゾシカは当然のことながら家畜とは違い、屠畜場などで殺されるわけではありませんから捕獲者(ハンター)は山で鹿を倒し、引きずり出してきます。実は野生獣皮に傷が多いとされる大きな理由の一つとしてこの時に付く傷があります。斃した現場から車が入れるところまでの間に地面に落ちている石や木の枝によって皮が傷つくのです。生きているときについた傷というのは(実際に自分がハンターとして捕獲したエゾシカを丁寧に運び出してきて鞣した革の仕上がりを見て)本当はそんなに多くはないのだと気づきました。

その他にもメスは6月以降、出産・授乳期に入るから栄養状態は良くないとか、オスは10月頃から繁殖期に入り、餌をあまり食べなくなるから脂肪が大分落ちるとか、実際に山で獣と向き合っているからこそ担保できる革の品質というものがあります。

EZO LEATHER WORKSは捕獲・解体・皮の下処理までを自分たちの手で、またその後の鞣し、製品製造を信頼できるパートナーと共に最後まで関わることで製品の品質を担保し、そのことでお客様に満足していただき、初めて捕獲者としての責任を果たせると考えております。


冬のエゾシカ猟の様子